新型コロナウイルスの影響を受けたことによる企業倒産件数が累計で2,000件に到達した。
東京商工リサーチ(TSR)は8月31日、2020年2月からの累計が同日時点で2,000件(負債1,000万円未満、弁護士一任・準備中を含む)になったと発表した。
2020年2月に第1号が判明して以降、1,000件までは約1年かかりましたが、2021年5月に1,500件、2,000件までは8ヶ月で達したことになります。
帝国データバンク(TDB)でも9月3日に累計で2000件目を確認したとしています。
TSRとTDBでは集計の方法などが違うようで倒産件数には若干の誤差はありますが、どちらも緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など経済活動制限の長期化や業績不振が長期化した企業が、事業継続を諦めるケースが増えていると分析している。
倒産件数におけるコロナ関連倒産の割合
TDBがまとめた倒産集計では新型コロナウイルスの影響が始まった2020年2月から2021年8月までを見てみると倒産件数は1万1,118件。
法人、および個人経営を対象で、銀行取引停止や内整理などは集計されていないそう。
そのうちの2,000件がコロナ関連倒産とすればおよそ倒産件数のおよそ18%がコロナ関連倒産。
倒産した企業の従業員は2万人に迫るとも言われています。
それでは2020年2月から2021年8月までを月別で見ていくとどうでしょうか。
月別 | 倒産件数 | 負債総額 |
---|---|---|
2020年2月 | 634件 | 663億7,400万円 |
2020年3月 | 744件 | 890億1,900万円 |
2020年4月 | 758件 | 1614億6,700万円 |
2020年5月 | 288件 | 711億3,100万円 |
2020年6月 | 806件 | 1264億3,800万円 |
2020年7月 | 847件 | 1048億100万円 |
2020年8月 | 655件 | 694億1,700万円 |
2020年9月 | 602件 | 679億9,600万円 |
2020年10月 | 647件 | 669億4,800万円 |
2020年11月 | 563件 | 952億1,200万円 |
2020年12月 | 552件 | 1450億300万円 |
2021年1月 | 506件 | 912億5,800万円 |
2021年2月 | 442件 | 777億4,500万円 |
2021年3月 | 648件 | 1400億5,300万円 |
2021年4月 | 489件 | 799億9,000万円 |
2021年5月 | 461件 | 1664億4,700万円 |
2021年6月 | 537件 | 725億8,300万円 |
2021年7月 | 490件 | 734億400万円 |
2021年8月 | 449件 | 946億2,100万円 |
2020年4月7日、東京や神奈川、大阪、福岡などの7都府県に初の緊急事態宣言が発令されましたが感染は収まらず。
4月16日には緊急事態宣言の対象を全国に広げた翌5月の倒産件数は288件と少ないです。
あの頃、未知のウイルスに対する感染の恐怖におびえ、学校は休校、街は閑散として静まりかえりました。
人が集まる施設や公共施設も閉鎖され、さまざまなことが制限される中で裁判所も閉鎖されたので、破産手続や民事再生手続もできない状況になったのことで倒産件数が減少したと言われています。
その証拠に、5月14日に39県で緊急事態宣言を解除、21日には大阪・京都・兵庫の3府県、5月25日には全国で緊急事態宣言が解除されることとなり、2020年6月の倒産件数は806件へと増加していますね。
コロナ禍でも倒産件数は低水準の異常事態だった
景気が悪化すれば企業の倒産件数は増える。
緊急事態宣言が発令されるたびに飲食店経営者が「このままでは経営が成り立たない」とメディアのインタビューにコメントするのがお決まりのパターン。
緊急事態宣言や外出自粛など新型コロナウイルスの影響を受けやすい飲食業や旅行業、宿泊業、衣料品の需要減少によるアパレル業など、これまでは考えられなかった倒産が続々と出てきています。
未曾有のコロナ大不況と言われていますが、TDBがまとめた倒産集計を見てみると実は倒産件数、負債総額ともに減少傾向にあります。
年別 | 倒産件数 | 負債総額 |
---|---|---|
2020年4月1日~2021年3月31日 | 7,314件 | 1兆2,174億6,900万円 |
2019年4月1日~2020年3月31日 | 8,480件 | 1兆2,187億8,900万円 |
2018年4月1日~2019年3月31日 | 8,057件 | 1兆5,548億9,00万円 |
2017年4月1日~2018年3月31日 | 8,285件 | 1兆6,934億7,500万円 |
2016年4月1日~2017年3月31日 | 8,153件 | 1兆9,465億1,500万円 |
2015年4月1日~2016年3月31日 | 8,408件 | 1兆9,063億8,600万円 |
2014年4月1日~2015年3月31日 | 9,044件 | 1兆8,870億3,100万円 |
2013年4月1日~2014年3月31日 | 1万102件 | 2兆7,473億9,300万円 |
たしかに、コロナ関連倒産はこれまでになかった業界や大手企業などの倒産が相次いでいます。
2021年上半期報(2021年1月~6月)の倒産件数は3083件と前年同期比▲21.8%減少。
負債総額も6280億7,600万円と前年同期比▲0.6%となっています。
つまり、新型コロナの影響や未曾有のコロナ大不況と叫ばれてはいるものの、倒産件数全体では減少しているのです。
政策支援で倒産件数は減っても潜在リスクは残ったまま
新型コロナウイルス感染症に係るセーフティネットや新型コロナ関連給付金や助成金、補助金など長期にわたる企業への金融支援から今後も倒産の急激な増加は想定しにくいと言われています。
その中でも中小企業者に対する金融支援は資金需要の低迷に苦しんでいた銀行にとって貸し出しバブルとなりました。
新型コロナウイルスの感染拡大以前から資金繰り難で苦境に追い込まれていた企業にとってもコロナ融資で資金調達が可能となり、危機を乗り越えられた企業もあります。
早いもので、コロナ禍を迎え1年半が過ぎようとしています。
返済期間や返済猶予期間は企業によって様々ですが、早い企業では2021年の4月頃より返済が始まっています。
通常の融資ではこれ以上の借入は難しいと判断されるような企業にもコロナ融資であれば貸し付けています。
とくにコロナ以前から業績が厳しく、コロナ融資で返済能力以上の資金を調達したものの、業績はコロナ以前と比べて改善していないことで債務不履行(デフォルト)となるケース。
本業立て直しや新事業への転換支援など簡単にできるものでもありません。
政府支援に頼り切りで事業が改善せずリスケを繰り返す倒産予備軍企業をが増加する危うさを抱えたままともいえます。
コロナ時代の倒産、何が違うのか
コロナ関連による倒産は今まで倒産とは程遠いとされる企業や業界が逆風にさらされたことです。
上場企業初のコロナ関連倒産として大きなニュースとなった大手アパレルメーカーのレナウンもそうですよね。
WBFホテル&リゾーツはコロナ関連による倒産の中では負債総額が1位の160億円でした。
度重なる緊急事態宣言などの人流抑制は旅行や宿泊、外食産業やアパレルなど必要ではあるが、なくてもいい娯楽に対して大きな痛手。
老舗の料亭や飲食店もコロナ前まで一見さんお断りだったところも今ではテイクアウトで凌いでいるところも多い。
良くも悪くもコロナによって時代は大きく変わろうとしているのかもしれません。